子供の「夜泣き」が心配!

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はじめに

赤ちゃんや幼児の夜泣きがどのような要因で生じるのか、その頻度やデータを国内外の研究を元に解説します。夜泣きに関わる生理的・心理的要因や家庭環境の影響などを整理し、実際の対処法も具体的に取り上げています。特に夜泣きを訴える保護者がどのくらいの割合でいるのか、また夜泣きが子どもの発達や家族の睡眠に与える影響などを、おもしろい研究論文を見つけたので紹介したいと思います。

夜泣きとは?

夜泣きとは、乳幼児が夜間に突然目覚めて大きな声で泣き出し、なかなか泣き止まない状態 を指します。月齢や年齢によって程度は異なりますが、新生児期から1歳前後にかけて特に多いとされています。

夜泣きは生理的な発達過程の一部といわれることも多く、寝返りやハイハイなどの身体的発達が進む時期に増えやすいとする説や、脳の発達が活発になるにつれて睡眠サイクルが変化しやすい時期があるという説など、さまざまな見解が存在します。実際に、夜泣きに明確な病的要因がなくとも、一時的に頻度が高くなることは珍しくありません。

夜泣きの原因

夜泣きの原因は多岐にわたり、単一の要素だけで説明できるわけではありません。ただ、代表的な要因としては次のようなものが挙げられます。

  • 睡眠サイクルの未成熟:新生児や乳児は大人に比べて睡眠サイクルが短く、深い眠りから浅い眠りへの移行が頻繁に起こりやすい。そのため、夜間に何度も目が覚めやすくなる。
  • 生理的変化:歯の生え始め(歯ぐずり)や運動機能の急速な発達に伴って、睡眠リズムが乱れたり、身体的な不快感が増したりすることがある。
  • 心理的要素:一人で眠るのが不安で泣き出す場合や、日中の刺激(大きな音、強い光、慣れない人との接触など)がストレスとなり、夜間に泣きやすくなるケースも報告されている。
  • 環境要因: 部屋の温度や湿度、照明の明暗などが適切でない場合、赤ちゃんが不快感を覚えやすくなる。特に温度や衣服が原因で夜泣きに至ることも少なくない。

つまり、夜泣きは赤ちゃんの発達過程において自然な現象とも言えますが、生活リズムや環境が影響し合うことで、泣く頻度や強度が大きく変化し得る点が注目されています。

日本国内の研究データ

日本でも夜泣きに関する調査や研究が行われています。代表的なものとしては、厚生労働省が実施している「21世紀出生児縦断調査」があります。ここでは、日本国内で2001年に出生した子どもを対象に追跡調査を実施し、さまざまな発達や生活環境に関するデータを収集しています。

公開されている結果の概要によると、

生後6か月から1歳頃にかけて「週に2回以上夜泣きを経験する」 

と回答した保護者が約30%にのぼるとされています。ただし、これには地域差や家庭環境(母子のみか、祖父母との同居かなど)も影響しているため、一概に全国平均として断定はできないものの、夜泣きに悩む保護者が一定数存在することが示唆されています

また、日本の育児文化では「夜泣き対策」に対して祖父母や周囲の助言が積極的になされることが多い反面、母親が一人で対応を抱え込む傾向 も指摘されています。夜泣きが長引くと、母親自身の睡眠不足や疲労蓄積を招き、産後うつや育児ストレスの高まりに繋がりやすいという報告も複数の学会・論文で取り上げられています。

参考: 厚生労働省「21世紀出生児縦断調査(平成13年コホート)結果の概要」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/27-21.html

国外の研究データ

夜泣きや夜間覚醒に関する研究は世界各国で行われていますが、その中でも有名なのが、イギリスの研究者 St. James-Roberts ら による一連の研究です

たとえば、1998年に行われた縦断的調査では、出生後2か月から3か月までの間に、「過剰な泣き(excessive crying)」を示す乳児が全体の約15~20% にのぼることが報告されています。

この「過剰な泣き」が夜間に偏って起きると、保護者が夜泣きとして認識しやすいと考えられています。また、夜泣きが長期化する要因として、家庭環境や育児方針の違い(母親が抱っこや授乳で泣きやむまで対応するか、ある程度放置するかなど)も関連していることが示唆されています。

出典: St. James-Roberts, I., Conroy, S., & Wilsher, C. (1998). “Links between maternal care and persistent infant crying in the early months.” Child: care, health and development, 24(5), 353–376. https://doi.org/10.1046/j.1365-2214.1998.00078.x

出典: Goodlin‐Jones, B. L., Burnham, M. M., Gaylor, E. E., & Anders, T. F. (2001). “Night waking, sleep‐wake organization, and self‐soothing in the first year of life.” Journal of developmental & behavioral pediatrics, 22(4), 226–233. https://doi.org/10.1097/00004703-200108000-00002

夜泣きへの対処法

夜泣きの対処法は子どもの性格や家庭環境によってさまざまですが、一般的によく挙げられる方法を紹介します。

生活リズムを整える

日中に十分に日光を浴びる、適度に身体を動かす、規則正しい就寝時間を設定するなど、睡眠サイクルが安定しやすい環境づくりが大切です。

入眠儀式を設定する

毎晩、寝る前に同じパターン(絵本の読み聞かせ、軽いスキンシップ、音楽を流すなど)を行うことで、子どもが「これをすると寝る時間だ」と学習しやすくなります。

自己入眠力を促す

子どもが一度目覚めたときに、すぐに抱っこや授乳などで対処するのではなく、少し様子を見てみる方法も有効とされています。子ども自身が眠りに戻る力を育てることで、夜泣きの頻度が減る可能性があります。

環境調整

部屋の温度や湿度、照明の明るさなどを子どもが心地よいと感じられるように整えます。また、雑音や刺激が強すぎると目覚めの原因になるので注意が必要です。

専門家への相談

夜泣きが極端に長引く、子どもの成長や健康状態に心配がある場合、あるいは保護者自身の心身の負担が大きい場合は、小児科や保健センター、助産師・保険師など専門家に相談することを検討しましょう。

特に、母親や保護者のメンタルを保つ ことが大前提となります。無理に一人で抱え込まず、パートナーや家族、地域の育児支援サービスなどを活用することが夜泣き対応を乗り越える大きな手がかりとなるでしょう。

まとめ

夜泣きは、生理的にも心理的にも乳幼児の発達過程に生じやすい現象です。国外のデータからは15~20%程度の乳児が「過剰な泣き」を経験し、そのうち夜間に集中して泣くケースがしばしば見られることが分かっています。日本国内の調査では、約30%前後の保護者が週に2回以上の夜泣きを経験していると報告されており、これが保護者の負担や育児ストレスの増加につながる可能性が指摘されています。

一方で、夜泣きはほとんどの場合、病気や重大な問題ではないという点も重要です。子どもが成長とともに睡眠サイクルを整えていく中で、頻度が自然に減っていくことも多々あります。また、保護者側のアプローチや生活環境の見直しによって、夜泣きが緩和されるケースも数多く報告されています。

夜泣きへの対応で大切なのは、日中から睡眠リズムを作る意識を持つこと、入眠儀式などで子どもの「寝る前の安心感」を高めること、そして何よりも、保護者自身が十分な休息やサポートを得る体制を整える ことです。夜泣きが辛いと感じたときは、ぜひ専門家や周囲の協力を得ながら乗り越えていきましょう。

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